『東インド会社遣日使節紀行』とは、1669年にオランダの宣教師であったアルノルドゥス・モンタヌス (Arnoldus Montanus) という人が書いた本なのである。これはヨーロッパで日本について初めて詳細に説明した本で、その後各国語に翻訳された。その本に用があり、今日は図書館に行ってドイツ語版をちょこちょこと読んできた。
今日行ってきた図書館は王宮内にある『肖像分館 (Porträtsammlung)』というような名前のところで、何で肖像画のところにモンタヌスの本があるのかわからないのだが、とにかく行って来た。しかし肖像画は一枚も見当たらなかった。が、白い手袋がいくつも置いてあった。どうやら貴書珍書の類を触れるのに使うものらしい。モンタヌスの本を読むのに私もあれを使わねばならんのかなと思ったが、いざ本が出て来た時、使えとも言われなかったので素手で触って読んでしまった。 なんとなく宮尾登美子の『天璋院篤姫』で、篤姫が天皇の手跡による源氏物語を読む機会に恵まれた時に、息を吐く時も脇を向いて、自分の吐息が本に直接かからないように心がけていた場面を思い出してしまった。もちろんモンタヌスにそこまで思い入れのない私はそんなことしなかったけれど、350年前もの本を手にして読めるということにはその篤姫の行為を思い出させるような、ちょっぴり感慨深いものがあった。 しかし古い本だし、そう簡単に見せてもらえるのだろうかと当初は危ぶんでいた。が、すぐに本を出して来て読ませてくれた。あまりにあっさり本が出てきてびっくり。また私が必要としている箇所が出てきて、その部分の写しをどうしても欲しかったのでダメもとでコピーを頼んだら素直にOKしてもらえ、無料でコピーまでしてもらった。……すごく大らかである。別の分館(写本分館)ではコピーに一枚50円くらい取られたこともあるというのに。同じ国立図書館の分館同士なのになんでこうも違うのだろう。 まぁ閑古鳥が鳴くくらいヒマそうな分館だったから、サービスの質もいいのかもしれない。何せ2時間いて利用者は私一人だった。利用者ノートというのをめくってみたが、多い日で20人くらいしか人が来ていない。そういう図書館の司書になりたいなぁと、司書を羨んでみたり。 肝心の本のほうに戻るが、私が今日読ませてもらった『東インド会社遣日使節紀行』のドイツ語訳は1670年に発行された初版本なので市場価格は多分100万円以上するのだ。そんな本から簡単にコピーを取っちゃっていいものなのか気になったりもするが、便宜的には非常に助かったので、そこのところには目をつぶる。 それと同時にオリジナルのオランダ語版も見たかったのだが、それはまた別の分館にあるということで、そちらのほうは今日は断念。しかしオランダ語版とドイツ語版、同じところにあってもいいと思うのだが、そうでないところがまたウィーン的。 参考: フランス語版だけど、挿絵や装丁はドイツ語版と同じなので、興味のある人はここを見てみるといいかも。フランス語版の値段が83,000ユーロということだから、ドイツ語版もきっとそれくらいの値段がするのだろうと思われる。何せ英語や日本語の復刻版で7万円というのをどこかで見たから、況やオリジナルをや。
by hwien
| 2004-12-28 00:51
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