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新訳聖書

2004年12月23日付プレッセ
Bibel Neu: "Und Gott sah alles, was sie gemacht hatte" (新しい聖書)

 ドイツ語圏から54人もの言語学者が集まって現在聖書を新しく訳している最中なのだそうである。目標として「わかりやすく、差別表現(女性差別、ユダヤ人差別など)のないドイツ語訳」が掲げられている。

 今回は「神」という単語にも文脈によって様々な訳語があてられるそうなのだが、それも新しい試みであるらしい。しかしこれに対するウィーンイエズス会のシェルグホーファー神父のコメントは懐疑的である。(まぁイエズス会は何百年も前から保守的な宗派なので、その気持ちはわからないでもないような……。)
 神父の言によると、元々神 (der Gott;男性名詞) というのは異教の女神たちと一線を画するために聖書で男性とされたというのである。それなのに勝手に「神」の代わりの単語を色々聖書に入れてしまうのはどうだろうかという疑問を呈しているらしいのだが、ギリシャ・ローマ神話にもゲルマン神話にも女神だけでなく男の神はいくらでもいたわけで、その神々と一線を画す必要はなかったのだろうか? それが不思議。それだったら「das Gott;中性名詞」にしたほうが本当に一線を画すことができてよかったような……。よくわからんなぁ。

 この試みのえらいところは、必要経費を全て寄付でまかなっているところ。プロテスタントでもカトリックでも、宗教団体から金をもらってしまうと、どうしても自由な訳が制限されてしまうので、寄付をつのって頑張るということらしい。
 ちなみに新訳聖書は2006年秋に出版予定だそうである。

Bibel in gerechter Sprache : 新訳聖書団体のサイトはこちら
# by hwien | 2004-12-25 17:28 | 文化

献血

2004年12月22日付プレッセ
Bitte eine Gabe: Samen, Blut, Plasma (贈り物に精子、血液、血漿)

 この時期は献血量も増えるのだそうだ。クリスマスを前にして、みんな鷹揚なのねと思わされる現象である。オーストリアは売血制度ではなく献血制度に頼っているので血液は売れないが、精液と血漿は売れる。精液は一度に50ユーロ(約6500円)、血漿は採取するのに一時間ほどかかるが、15ユーロ(2000円強)。精液は悪くないお値段だなと思うがたったの3回しか提供してはいけないそうなので、それで生計を立てていくのは無理である。血漿は血液製剤の材料にするらしいが、どれくらいの量を取られてしまうのかは不明。その多寡によって15ユーロという料金設定(?)が高いか安いか変わってくるような。

 私は女なので、精液が売れるかどうかより卵子が売れるのかどうかということに興味があるが、それについては上の記事には何も載っていない。しかし一度どこかで、卵子は一回の提供につき30万円だか50万円ほどもらえるのだとか読んだおぼえがある。尤もこれはアメリカでの話で、オーストリアの相場は知らない。だがいずれにせよ、精液と違って卵子は採取する工程が複雑だし、卵子提供者も多少の苦痛をしのばねばならないので、値段が高いのだということらしい。しかし卵子にせよ精子にせよ、自分の知らないところでそれを材料に子供が出来ちゃっているかもしれないというのには抵抗感をおぼえる。まぁ自分で何も知らなければそれで済むさと割り切れるならいいのだろうけれど。

 それはそうと、オーストリアの無償で生き血提供制度には大きな欠陥があるような気がする。というのも、献血したいといえば否も応も無しに450mlも血を抜かれてしまうのである。私がかなり前に一度献血した時はそれでも大丈夫だったのだが、今年の夏に再挑戦した時には大変だった。献血直後は何ともなかったがその後2~3週間ほど体調を崩してフラフラになってしまった。早くも「年寄りの冷や水」という嫌な言葉が頭をよぎったほど。
 その経験から450ml献血の無謀さについて学んだ私は、先日献血バスを見かけた際に中に入って「200mlだけ献血したいんですけれど」と言ってみた。が、200mlじゃ用無しと体よく追い払われてしまった。人のお役には立ちたくとも、450mlも生き血を抜かれたくはなしと私もスゴスゴ帰って来たが、オーストリアの赤十字には200ml献血導入についても是非一度検討して欲しいと思った次第。ま、みんな体格よくて450ml献血なんて屁でもないから、200ml献血の必要性については考えも及ばないのだろうけれど。

 ちなみにオーストリアでは、献血後は軽食やお菓子を食べられるだけでなく、ワインも飲み放題である。この大らかさがいいなぁ。
# by hwien | 2004-12-24 02:32 | 健康

×日後のゴミ

×日後のゴミ_b0053513_17172553.jpg
2004年12月18日付プレッセ
Der Forstwirtschaft: Christbaum in der Krise (山林業: クリスマスツリーの危機)

 クリスマスツリーが値上がりしすぎなのだそうだ。2000年と比較して20%も値上がり。インフレ率よりクリスマスツリーの値上げ率のほうがよっぽど高いのだという。

 クリスマスツリーなんて買ったことがないので全然知らなかったが、平均で20ユーロ(2500円ほど)強くらいするそうだ。しかし40cmくらいのミニクリスマスツリーから、2m以上の大物まで全部を足して割った平均が20ユーロということだろうから、それほど安いとはいえないのかも。普通の家庭だったらけっこう立派な木を飾っているから、毎年50ユーロくらいは散財しているのではなかろうか。

 木のほうは値上がりしているが木の消費は減っているので、売り上げは以前と変わらないらしい。1996年の時点で70%の家庭にクリスマスツリーが飾られていたが、現在ではそれが60%に……。それでも今年だけで200万本の木が売れて、売り上げ合計は4,300万ユーロというのだから大したものだ。しかし小国オーストリアだけで200万本とはけっこうな数である。

 生木の使い捨ては勿体無いから、プラスチックツリーを使うわけにはいかないのだろうかと毎年思う。しかし日本の門松も生木であるからなぁ。いや、だけどあれには松をちょっぴりと成長の早い竹を使ってあるから、それほど勿体無いという感じもしない。でも育つのに何年もかかる木をせいぜい2週間くらいしか飾っておかないのに使い捨ててしまうのにはちょっとため息。まぁクリスマス後にこの木を再利用するため、ウィーン市清掃局が元クリスマスツリーを集めてはいるのだが、果たして何になっているのだろう? 楊枝? はたまた割り箸?
# by hwien | 2004-12-22 17:33 | 文化

Cワード

2004年12月21日付プレッセ
Politically Correct: Das verpönte C-Wort
政治的公正さ: 禁忌のCワード

 アメリカの話。最近のアメリカでは、FワードならぬCワードという類の言葉まで避けるべしとされているのだそうである。そのCワードとは、クリスマスのC。「メリー・クリスマス」というのは、非キリスト教徒及び無神論者及び無政府主義者(何でここに無政府主義者まで入ってくるのかわからないが、記事にそう書いてあった)にとって意味のない言葉なので、無思慮に口に出すべきじゃないのだそうである。いやでもアメリカ人に住む人間の大半がクリスマスを祝うと思うので、「メリー・クリスマス」でいいんじゃないのと非キリスト教徒の私すら思ってしまうが、それじゃダメらしい。というのも、テレビや広告でもCワードは追放されてしまって今やその代わりに「Happy holidays」が台頭してきているのだそうだ。
 Cワードには、クリスマスツリーも入っていて、「コミュニティツリー」と名前を変えた例もある。

 また教会においてもイエス・キリストが「父なる全能の神の右側に座る」と言わないように気をつけている場合もあるとか。(上のセリフがどういう時に唱えられるのかは知らないが、スタンダードな祈り文句なのであろうと推察される。)というのも、キリストが神の右に座ったら、左利きの人に悪いから。

 ……ここまでくると、言葉狩りというよりは自分で自分の首を絞めているようにも思われなくもない。果たしてそんなのを政治的公正さと呼んでいいのかどうか。こういった自発的言葉狩りはむしろ、些細なことを差別だと言いがかりをつけられることを恐れるあまりのヒステリー的過剰反応のように見える。
# by hwien | 2004-12-21 21:07 | ことば

EUに加盟する方法

2004年12月20日付プレッセ
Andererseits: Wollen Sie auch EU-Mitglied werden?
(それはそうと、あなたもEU入りしたい?)

 トルコのEU加盟に向けての交渉が正式に始まることを皮肉ってのコラム。これを書いたのはクリスティアン・オルトナーという人だが、月曜日のこの人のコラムは大抵面白い。が、今回のものは今までの中で一番よく書けているんじゃなかろうかと個人的に思った。

 「もしあなたがアジアの小国の首相で、EUにどうしても加盟したいのだったら……」という書き出しで、14か条に渡ってEUに加盟するコツを伝授してくれている。例えば第一か条には、「事務所には青いEUの旗を飾っておきなさい。そうすれば見た目がいいし、何よりヨーロッパの価値観を有しているとの証になるから」と書いてある。三か条には、「ゲルハルド・シュレーダー(ドイツの首相)を頼りなさい(FAX: 0049/188 400-0 と、本当に書いてある)。そしてあなたの国からの出稼ぎ労働者300人以上をベルリンに集めてみせれば、シュレーダー首相は一番の協力者となってくれるだろう」。と、こんな感じ。ちなみに二番目に熱心な協力者となってくれるのはブレア首相ということである。

 私の訳じゃうまくないので、本当はリンク先の記事を自分で読んでみるのが一番。

 トルコ加盟は遂行するにしても、まだまだ50年くらいは時期尚早じゃないかと思うのだが、一体どうなるのやら。
# by hwien | 2004-12-21 20:48 | 政治・政党